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口腔筋機能療法(MFT)とは「口の周りの筋肉の機能を改善する訓練法」です。英語ではOral Myofunctional Therapyといい、Myo(筋)の「M」、Functional(機能)の「F」、Therapy(療法)の「T」でMFTと略されます。
MFTは筋肉の機能を訓練によって改善し、歯列の正常な形態を維持するための環境作りを行います。個々の筋肉のトレーニングに加え、咀嚼・嚥下の訓練を行い、舌と口唇の正しい安静位を得ることによって、歯列に対する筋圧のバランスを整えます。
MFTは主に米国において1950年代より発展を遂げました。MFTの国際学会であるIAOM(International Association
of Orofacial Myology)は1972年に米国で設立されました。日本においても、日本口腔筋機能療法研究会(MFT研究会)が2002年に設立され、2013年には日本口腔筋機能療法(MFT)学会に移行し、大会および会報発行等が行われています。
くちびる、舌、頬の筋肉のほか、咬む筋肉やのどの筋肉などです。食べたり、飲み込んだり、話したりする時に働きます。
歯には、外側からはくちびるや頬からの力が、内側からは舌からの力がかかっています。この力のバランスがつりあっていると歯は正しい位置を保てます。
これに対して、いつも口をぽかんと開けていたり、いつも口で呼吸をしていると、くちびるから歯にかかる力が少なく、舌から歯にかかる力が増した状態になってしまいますので、歯が外側に出てきてしまったり、前歯がく合わずものが噛み切れなくなったりするなどの不正咬合が生じることがあります。
また食べたり、飲み込んだり、話したりする時の筋肉の働きが正しくない場合には、上手に食べられない、クチャクチャ音を立てて食べてしまう、歯垢がたまりやすい、滑舌が悪い、矯正治療の後戻りが生じる、入れ歯が合わない、などの問題が生じることがあります。
このような状態のことを、「舌癖(ぜつへき)」、「異常嚥下癖」、「舌のくせ」、「口腔周囲筋の機能異常」などと呼びます。
安静時には次のような状態が正しい状態と考えられています。
・くちびるはリラックスした状態で閉じ、鼻で呼吸している。
・舌はリラックスした状態で上あごに拳上している。
・咀嚼・嚥下時以外は上下の歯は離れている。
食べるとき、飲み込むときには、次のような状態が正しいと考えられています。
・前歯で食べ物を捕らえ、小臼歯で粉砕し、奥歯でよく咀嚼する。
・舌は食べ物を奥歯の方向に送り、頬が食べ物が奥歯の上に乗ることを助ける。
・くちびるは軽く閉じており、くちゃくちゃという音が出ない。
・飲み込むときには上下の歯がしっかりと合わさり、顔はリラックスし、舌が突出しない。
発音(会話)をする時には、次のような状態が正しいと考えられます。
・発音時に、上下の前歯の間から舌が突出しない。
・相手に自分の意思が伝わる。
・発音時の筋圧が歯列に悪影響を及ぼさない。
※口腔筋機能療法のレッスンを通じ、上記のような状態を目指します。
口の周りの筋肉の機能のバランス崩す原因として、次のことが挙げられます。
・食べる機能の発達不全:
食べる機能は、生後学習によって後天的に発達するため、成長期における食事の内容が影響を与えます。現在食(軟食)との関連が指摘されています。
・口呼吸(アレルギー、扁桃肥大):
鼻が詰まっている状態が続くと、口から呼吸することになり、顎が下がり、舌が下前方に位置付けられます。また扁頭に炎症があると疼痛により舌が前方に位置付けられてしまいます。
・舌小帯の問題:
舌小帯とは舌の裏側にあるヒモのことですが、これが短かったり、付着部位に問題があったりすると、舌の運動が制限され、発音(滑舌)に影響が生じることがあります。その場合、必要に応じてヒモを伸ばす手術(舌小帯伸展術)を行うことがあります。
・指しゃぶりなどの口腔習癖:
指しゃぶりはほとんどの子供に見られる生理的な癖ですが、永久歯が生えてからも長期に続くと口の周りの筋肉の機能に悪影響を与えます。
・不正咬合・骨格異常:
骨格性下顎前突症や開咬など、構造的に口腔周囲筋の機能の正常なバランスが得られない場合があります。その場合には矯正治療が必要です。
・巨舌症:
舌筋線維の肥大、腫瘍、全身疾患(アクロメガリー、クレチン病、アミロイドーシス等)などがある場合です。
・神経筋機構の病変:
神経や筋肉に病変がある場合です。
まず口の周りの筋肉の、どの部分の働きが正しくないかを診断し、それを直していきます。また、食べ方、飲み込み方、発音の仕方の練習などを通じ、ふだんいつも、舌やくちびるが正しい位置にあるようにしていきます。
通院は2〜4週間に一度、30分ほどのレッスンで、毎回15分ほどの音声をボイスレコーダーなどに吹き込みます。
ご家庭ではこの音声を聴きながら筋肉の動かし方の訓練をします。個々の訓練は難しくはありません。多少の根気強さが必要かもしれませんが、録音した音声を使用することでかなり助けになります。
レッスンは個室で行います。具体的なレッスンの内容としては、アイスの棒のようなもの(舌圧子)を使ってくちびるや舌の筋肉の訓練をしたり、スプレーで水を吹き入れてそれを正しく飲み込む訓練をしたり、実際に食べ物を用いて咀嚼・嚥下の訓練をしたりします。
筋肉の働きが正しくなるにしたがい、歯並びが自然に整ってくることが時々みられます。ただし、口腔筋機能療法は機能に対するアプローチですので、実際には形態に対するアプローチである矯正治療と並行して行う必要がありることがほとんどです。形態と機能は密接な関係があり、歯並びが悪くなる原因は筋肉の働きだけではありませんので、口腔筋機能療法のレッスンを始める前には、矯正の精密検査と筋機能検査の両方が必要です。
これらの検査の結果によっては、矯正治療と口腔筋機能療法のレッスンを組み合わせて行ったり、先にしばらくレッスンを行ってから矯正治療を行ったり、先に矯正治療によって形態を治してからレッスンを行ったりします。治療前によくご説明いたします。
レッスン料は1回に付き5千円〜1万円(税別)で、内容によって多少変わります。レッスンの前には矯正歯科の検査と筋機能の検査をお受けいただきます(別料金)。当院では矯正歯科の検査、診断に基づいたレッスンのみを行っていますので矯正歯科に関する費用は別途必要となります。レッスンを受けるかどうかを決めていただく前に治療費について具体的にご説明いたします。なお、口腔筋機能療法と矯正治療は密接に連携を取り合いながら進める必要があります。他院で矯正治療をお受けになっている場合、MFTのみを当院で施行することは控えさせていただいております。
IAOM(国際口腔顔面筋機能学会)という口腔筋機能療法の国際学会があり学会誌を発行しています。当院の高橋未哉子と高橋治はともにIAOMの認定資格(Certified Orofacial Myologist)を取得しています。
2002年には「日本口腔筋機能療法研究会」がMFTの臨床および研究に関する情報の交換の場として設立され、2013年には「日本口腔筋機能療法学会」となり、大会開催および会誌の発行を行っています。
当院の高橋治と高橋未哉子は、「口腔筋機能療法 MFTの実際」(クインテッセンス出版)、「MFT入門」「MFT臨床」(わかば出版、共著)などを執筆しています。また、歯科医師や歯科衛生士用の教科書にも記載があります。「口腔筋機能療法
MFTの実際」の概略(pdf)はこちらからご覧いただけます。